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株式会社日本航空インターナショナル様

器材というのは、一般に安全性が増すと使い勝手が悪くなるものですが、この作業台にかえたらエンジン交換に要する時間が10%短縮しました

「安全」と「品質」を第一に航空機の運航・整備を行っているJALグループでは、より一層の安全の向上の為に国際線就航のボーイング777型機エンジン交換用作業台の製作をsnorkelに依頼した。
株式会社JALエアテック 施設設備管理部 成田ライン設備グループ課長補佐 加藤智業氏、株式会社JAL航空機整備成田 運航点検整備部 第3運航点検整備課第8係 係長 中野義広氏に作業台製作の背景と導入後3年半が経過した作業台への評価について詳しく伺った。

株式会社日本航空インターナショナル様

JAL航空機整備成田と航空機整備の概要

本日は導入から3年半が経過したボーイング777用のエンジン交換用作業台についてお話しを伺います。

最初に中野様の会社、株式会社JAL航空機整備成田(以下JALNAM)と加藤様の会社、株式会社JALエアテックについて教えてください。

どちらもJALグループの会社で、JALNAMは、国際線のメインベースである成田国際空港において、日本航空をはじめとするJALグループ航空機の運航・機体整備作業及び外国航空各社航空機の運航整備作業を実施しています。
関空、中部、新千歳、福岡に支店があります。1988年設立、従業員は1816名です。

株式会社JALエアテックは、空港内特殊車両および航空機整備用器材の設計、製作、メンテナンスを主力業務としている会社です。
1958年創業、従業員数は約400名です。

JALNAMで行っている整備について教えてください

JALNAMでは、「安全」と「品質」を第一条件として整備を行っています。整備を大きく分けると、航空機自体を整備する「シップ整備」とエンジンや各装備ごとに専用の工場で整備する「ショップ整備」があります。
JALNAMでは「シップ整備」を行っており、発着ごとに行う「運航整備」と「点検整備」があります。
snorkel社にはエンジン交換作業時の作業台2台の製作を依頼しました。
1台目は2005年3月、2台目は2006年2月に納入されました。

JAL安全啓発センターのプレスリリース航空機整備について 「安全への取り組み」

ボーイング777のエンジン交換用作業台の製作を依頼

この度の作業台製作の経緯について教えてください

国際線に就航しているボーイング777(以下777)は、-200ER、-300ERと2種類の機体があり、搭載されているエンジンもそれぞれGE90-94B、115Bという型式のエンジンです。
従来の747型機のエンジンに比べて大型であり、マウント部も高所になります。

777はJALで就航して10年以上経ちますが、最初は国内線で就航しており、国際線に就航して成田で整備するようになったのは2003年からです。
国際線では燃料をたくさん積む為、推力の高さが要求され大型エンジンになります。
最初は他の航空機で使用している作業台を代用していました。
777はエンジンが大きく、代用の作業台は使い勝手がいいとは言えませんでしたが、専用の作業台をつくるほどでもないと思えました。

ところが、エンジン交換作業は成田で行われるだけではなく、海外で交換を要するトラブルが起きれば、行って交換しなければなりません。
777は、ロンドン、パリなどに就航しており、ヨーロッパ行きはロシア上空を飛びます。
777は双発機なので、万が一、片方のエンジンが停止した場合、90分以内に近くの空港に着陸しなければいけないという規則があります。

広大なロシアで代替え空港に着陸してエンジン交換が発生したときに、現地では照明や器材を調達するすべがないこともありえます。そこで万が一の事態に備えて、現地に送るための組み立て式の作業台を製作することになりました。

エンジン交換用作業台に求める要件とは

エンジン交換用作業台に求める要件は何でしょうか

JALエアテックとJALNAMで検討の上、作業台に希望する要件を以下のように定めました。

  • 1.エンジン部(地上から5m)へ安全にアクセスできる高さで、安定して自立していること
  • 2.作業台上に充分な作業スペースを確保できること
  • 3.エンジンのイン、アウトどちらにもセット可能な左右対称型であること
  • 4.エンジンからなるべく近い距離にまで接することができること
  • 5.海外でのエンジン交換作業発生時は飛行機に搭載可能であること
  • 6.作業台上での昇降は階段式であること

比較検討した方法とsnorkelを選んだ理由~提案内容とコストパフォーマンス

要件を満たす作業台をどのように絞っていったのでしょうか

最初はシザースタイプを検討しました。しかし、5メートルの高さで、充分な作業スペースを有するシザース式は大型化し航空機への積載が難しく、かつ制作費も高額となるので現実的ではないと結論しました。
そこで、組立式にしようということになり、基本仕様をまとめて具体的にメーカー選定に入りました。

比較検討した方法とsnorkelを選んだ理由

メーカーの選定はどのように行ったのでしょうか

JALグループの中で購買を担当している株式会社JALUXに仕様と予算を伝えて候補先の選定を依頼しました。
snorkel社を含め3社が候補として選定されました。他の2社は既存の取引先でした。
3社に要件を伝えて提案をお願いしました。

1社からの提案は、ボルトナットでの組立式でした。
クレーンを使用する箇所もあり、設備があるとは限らない海外に送るのは難しいと判断しました。
もう1社は、提案内容はよかったのですが、価格面でsnorkel社より相当高額でした。
提案していただいた内容が要件を満たし、かつコスト面で予算内であるsnorkel社に決めました。

snorkelとは取引実績がありません。海外メーカーでもあります。不安はありませんでしたか

品質面では、snorkel社は市場に既成の製品がたくさん出ています。
それらについては日本のものより丈夫にできているという現場からの声がありましたので心配はありませんでした。
初めての取引という点は逆に評価したところでした。
取引先が固定化してくると弊害も出てきますので新しいメーカーと取引をするいい機会であるという捉え方でした。
とはいえ、初取引であることの不安はやはりありました。

海外メーカーへの発注に不安はなかったか

初取引であることの不安はどのように解消したのでしょうか

サンプルを見せてもらい、代表の佐久間さんとも充分に打ち合わせを重ねていく中で不安は解消しました。
それでも、詳細設計に入るとアイルランド工場とのやりとりになるので、その不安はまだありました。

その後、2004年11月22日にアイルランドから技術者のJohnさんが来日して行った打ち合わせは印象的でした。
言葉の壁はありましたが、互いに設計書を見ながらの打ち合わせで充分に意志の疎通ができ、不安はなくなりました。
その後、2008年1月にアイルランド工場に検品に行った時には技術者のAlanさんとお会いしました。

評価になりますが、「パイプで組んでいる台であっても揺れてはいけない」「しっかりしていて、しかも軽くなければいけない」など、ともすれば相反するような要望に応えていただいて、JohnさんもAlanさんも立派な技術者であると思います。
細かい日本人の注文をよくくみ取っていただき、これまで国内の技術者とさまざまな仕事をしてきましたが、それらに勝るとも劣らない信頼感を抱くことができました。

コンパクト~snorkel製エンジン交換用作業台の第一印象

※導入した作業台の仕様
数量 :2基(成田常設用・支店送付用)
用途 :ボーイング777-200ER、300ER エンジン交換用
材質 :アルミパイプ製
サイズ:全幅1.29m 全高 6.0m 全長 3.3m
総重量:1380kg
耐荷重:350kg
形態 :3フロアを有する
※製作スケジュール
2004年8月  JALにおける仕様決定
2004年11月 snorkelに発注決定
2004年11月 アイルランドより技術者来社 詳細打ち合わせ
2005年1月  製作開始
2005年3月  1号機納入
2006年2月  1号機は据え置き用として成田にて常設使用。運搬用に2号機を納入

では、JALNAMの中野さんにお聞きします。納入された作業台の第一印象はどうでしたか

パッと見たときに「小さくていいな」と感じました。
小さいということは作業性がいいということで大きいとそれ自体が作業のじゃまになるという欠点があります。

JALグループは作業上の安全にも厳しく、常にしっかりした器材を製作します。
セットしたり着脱するのに非常に重いものができることもありますが、今回の作業台は想像していたよりもかなりコンパクトでした。
試しに3人で押してみたら動いたことにも驚きました。
今までは6人くらいで動かすようなものがほとんどでしたから。

では、機体にセットして使ってみようじゃないかということで、セットして頂上まで上ってみました。
頂上の作業台はスペースが広く、フィット感がありました。 フィット感というのは、機体に近づいているということです。
20センチの近さまで近づくことができました。
作業上の安全の為には30センチのすきまがあると更なる対応が必要です。
そういう点では、この作業台の製作には相当苦労されたのではないかと思います。

snorkel製作業台への評価~安定性、安全性、効率化への貢献

1台目を導入してから3年半使用されて、評価はいかがでしょうか

以下の6点を特に評価しています。

1、作業効率が10%上がったこと

この作業台は、1度機体にセットするとエンジンを搬送するとき以外は付けたままで作業ができます。シザース車だと、3-4回離したりセットしたりがあり、都度アップダウンさせ、張り出しを出し入れして、アウトリガーもセットしたり外したり、とそのことにかなりの時間をとられていました。

それまでのエンジン交換には30時間かかっていましたが27時間に短縮されました。交換作業は10人で行っているので、その人数で3時間短縮できるのは大きなことです。

JALNAM 中野氏

2、安定していて、作業性がいいこと

マウントボルト(機体からのエンジンの脱着)が一番大きな作業で器材も重く、力を必要とするので作業台がしっかりしていることが必要です。
この作業台はエンジンのインとアウトにセットし、間にパイプを渡しているので安定しています。

各フロアの作業台も広めにつくられており、片方に2人ずつ上がって器材も置けるくらいのスペースがあります。
「落下物」「転落災害」は絶対に避けなければならないことで、その点この作業台は安心して作業ができます。

3、機体の近くまで近づける

この作業台は、機体から20センチのところまで近づいて作業ができます。
-200ERと-300ERでは30センチ程の高さの違いがありますが双方に対して同じようにフィット感があります。

4、作業台上での昇降が階段でできること

この作業台は階段式なので器材の上げ下ろしも安全にできます。
パイプで組み立てるタイプの作業台は昇降が梯子式になっていることが多く、
今まではシザース車で器材を別に上げていたのでこの点も効率アップになっています。
また、1つの作業班にはリーダーがおり、作業を頻繁に見回りながら作業を進めていきますので、
階段式であることで効率的に見回りができミスの防止につながります。

5、コンパクトで動きが軽いこと

全体に小さく、動かすときにも軽く動きます。
高価なエンジンまわりでの作業なので、キャスターは重量を支え、
かつ軽くスムーズに動けるものであることが重要です。snorkel社製のキャスターはその点優秀です。

6、組立に時間がかからないこと

1時間半から2時間で組み立て上がります。これは充分な早さです。

総合的にたいへん満足して使用しています。
通常器材や作業台を製作するとマイナス面も出てくるものですが、この作業台にはマイナス面が見あたりません。入社して29年経ちますが、今までで一番のヒット製品です。

成田常設用と支店運搬用の2台を製作

2005年3月に導入したあと、約1年後にもう1台導入されたということですが

1台目を製作した当初は、支店でエンジン交換の必要が出たときに送って使う予定でした。使用してみたところ、安全と効率のアップに想定以上の効果があったので、成田常設で使用していました。そこで当初の予定だった支店用を製作しました。
幸い、777では現在まで成田以外でエンジン交換ということはありません。

今後の期待

snorkelに対する今後の期待があればお聞かせください

snorkel社には今回このようなご相談をさせていただき、要件を満たす作業台ができました。ありがとうございました。

今後ともsnokel社が持つノウハウとJALグループのニーズとマッチするところがあれば幸いです。
これからもいろんな場面でご協力をお願いします。

JALエアテック 加藤氏(左)、JALNAM 中野氏

JALエアテック 加藤氏(左)、JALNAM 中野氏

※ 株式会社日本航空インターナショナルのWebサイト
※株式会社JAL航空機整備成田(2009年 株式会社JALエンジニアリングに統合)
※ 株式会社JALエアテックのWebサイト
※ 取材日時 2008年9月

お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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